「バイオベンチャー通信」

創薬バイオベンチャーについての情報を発信していきます。なお、ブライトパスバイオ、モダリス、ステムリムについては個別ブログをご覧願います。

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記事015:創薬ベンチャーのビジネスモデルを考える。

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記事➡創薬バイオベンチャーのビジネスモデルをよく理解することは、個人投資家にとって必須の知識です。

1.バイオベンチャーの使命は。

よく、「まだ第Ⅰ相だから、先は長いですね~」「成功するのって何万分の一でしょ」という投資家の声を聞きます。
確かに手掛けた新薬がめでたく上市され、ロイヤリティが入ってくれば、それに越したことはありません。
しかし、上市前でも、ライセンスアウト料やマイルストンなどを得ることが出来れば、しかも巨額のライセンスアウト料であれば大きな収益となり、投資家にとっては、そのタイミングで株価の大幅な上昇に繋がります。

誤解を恐れずに申し上げますと、例え上市しなくともライセンスアウトまで実現できれば、それでバイオベンチャーとしての社会的な責務も、株主に対する責任も全うしたことになると思います(私見)。
以下は、創薬ベンチャーのビジネスモデルを図にしたものですが、近年は抗体医薬やオーファン(希少疾患薬)など非臨床段階でライセンスアウトや協業契約する場合も出てきていて、前倒し傾向にあります。

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2.バイオベンチャーの課題

繰り返しになりますが、」近年の上場バイオベンチャー企業の一般的なビジネスモデルは・・・
「最新のサイエンスの中で高いアンテナを張り、数ある研究の中から有望なネタを見付けて新たなパイプラインとして共同研究契約を結び、原則は第二相まで育て上げて、三相からは大手企業にライセンスアウトする」
というものです。
ですから、バイオベンチャー企業の経営には
a. とにかく「将来性のありそうな有望なネタを探す」
b. ネタが見付かったら、出来るだけ好条件でお相手と契約を結ぶ。
c. 株主・マーケットに対して、新たな共同契約やパイプラインをお披露目し、理解と賛同を得る。→株価は上がる。
d. 有能な研究者のもと研究を進めて、獲得した二相までの有望なデータを引っ提げて新規パイプラインをメガファーマーに売り込み、ライセンスアウト契約に漕ぎつける。
e. ライセンスアウトして収益を得て、その後のマイルストンもしっかりと取り込む。
f. 上記a~fを繰り返して、新たなパイプラインを連続的に増やしていく。
g. fの継続的循環を維持向上するために、潤沢な資金を調達する。
h. マーケット・株主に対し常時情報提供を行い、自社の現時点での方向性・課題などを常に明らかにする。
などが求められてきます。

このa~hの中に、バイオベンチャーの課題が見え隠れしています。
①研究者の処遇、人材の確保
40~50年昔の新薬開発は、大学院を卒業した若者が大手製薬会社の研究所に入り、その後「この道一筋30年」などと言われるように、極めて狭い分野を掘り下げて研究しますが、その先運良く金脈にぶち当たる研究者はほんの一握りです。
有能な研究者であっても、名声を得て世に知られるまでになる者はごくごく少数です。ただ、研究者は大手製薬企業に就職して一定の収入を得るので、例え金脈を発見できなくとも、経済的には一定の安定したレベルを得ることが出来ます。
しかし、昨今の日本の研究者の処遇は厳しいもので、有能な研究者でも一企業に属すれば並みの給料しかもらえません。有能な人材が海外流出する所以です。海外に出るか、国内でベンチャーを立ち上げるか、ですが、国の支援や枠組みの中でそれらの優秀な人材を優遇する方策を模索するべきでしょう。
②資金面の苦労
バイオベンチャーの多くは赤字会社であり、これといった資産もありませんので融資を受けることは困難です。それゆえ、多くのベンチャーは「第三者割り当て」によってマーケットから資金を調達します。調達した資金で研究を持続しめでたく成功して高値のライセンスアウトが出来ればよいのですが、「有意差なし」で治験を失敗すると、マーケットから見放されて先細りしていくベンチャーも少なくありません。そうなると悪循環で更にダメージが膨らみます。

③世界の強豪ライバルに勝ち抜く。
欧米では、新薬の開発における創薬ベンチャーのポジションは確立されており、マーケットでの評価も日本とは比べ物にならないほど高いものです。
以下は、①大手製薬企業と②バイオベンチャー企業との時価総額の比較です。

①大手製薬企業では、日米間の開きは6.6倍ですが、
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②バイオベンチャー企業で比較すると、その格差は57.7倍に広がります。
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さらにアジア諸国と比べても見劣りするレベルです。
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世界に目をやると、日本のバイオベンチャーのマーケットでの地位は低く、従って海外からの投資も少なく、国内でも生損保や機関投資家からの中長期的な投資は低いレベルにあります。
このような背景を打破するために、経産省などがテコ入れはしていますが、なかなか成果には表れてきません。

以下は、私が特に注目している上場したばかりのバイオベンチャーです。
それぞれビジネスモデルは微妙に異なっており、その違いが株価の伸びにも関係しているようにも感じます(このことはまた校を換えてお話しします)。
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以下に添付した資料は、東証(JPX)が一般投資家のために作成した「創薬系ベンチャー企業について」という資料です。
コンパクトに要点がまとめられていますので、是非ご一読願います。

「創薬系ベンチャー企業について」(JPX)→https://www.jpx.co.jp/listing/others/risk-info/tvdivq0000001rss-att/nlsgeu000000xf3f.pdf

こちらは日本製薬協(JPMA)の資料です。→http://www.jpma.or.jp/about/issue/gratis/guide/guide12/12guide_06.html


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